新電力って何?
1.新電力とは?
新電力とは何でしょうか?新電力とは、文字通り新しい電力会社のことです。新電力というからには旧電力があるはずです。先ずはそこから勉強していきましょう。新電力が生まれたきっかけは、電力自由化です。かつては沖縄を含む10の地域ごとに1つの電力会社があり、発電から小売りまでのすべてを受け持っていました。具体的には北から北海道電力、東北電力、東京電力、中部電力、北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、そして沖縄電力です。これらがここで言う旧電力です。これらの会社は、発電、送電、販売までを一手に行い、担当地域の電気の安定供給を担ってきました。その地域で1社しかないので独占状態でした。このため、私たちは住んでいる地域の電力会社からしか電気を買うことができませんでした。そこには競争原理が働かず、電気料金の詳細も不明で、いわれるままに支払わざるをえませんでした。 規制緩和、自由化の風潮の高まりとともに、電力についても自由化すべきとの声が上がり、20年ほど前にようやく国が重い腰を上げ、電力システム改革に乗り出しました。電力システム改革とは、日本の電気事業制度を変える仕組みです。送電網を広域的に運用することを推進し、地域独占を崩すことで、電力の小売りを自由化することが主な趣旨です。
1999年には電気事業法が改正され、2000年から2,000kW以上の大規模工場などに限り購入する電力会社を選べるようになりました。その後段階的に範囲が拡大され、2016年4月からは最後まで残っていた家庭と中小企業向けの電力の小売りが自由化されました。これをきっかけに、電力を小売りする会社が多数誕生しました。これが新電力といわれる会社です。これによって私たちも電気を購入する電力会社を自由に選べるようになりました。
2.電力の小売とは?
電力を小売りするとはどういうことでしょうか。例えば、青森で生産されたりんごは、一部は産地で直売されることがありますが、大半は地域の農協を経て卸売り市場に運ばれます。街の青果店などの小売り業者は、この市場でりんごを買い取り店頭に並べます。我々はそれを購入しています。それと同じことが電力で行われるようになったのです。すなわち、発電所で作られた電気を卸売市場を通して小売業者が買い取り、それを各家庭に販売する。この小売業者が新電力です。
その気になれば誰でも新電力を作り、電気を販売することができるようになったのです。ガス会社、石油会社と言ったエネルギー関連事業会社だけでなく、携帯電話会社など、異業種の会社も多数参入しています。今では、全国で707社が参入しています(2021.2.19現在)。
<参考>https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/summary/retailers_list/
3.自由化に伴う新たなシステムとは
電気は発電所で作られますが、りんごとは異なりトラックや鉄道で運ぶというわけには行きません。電気を運ぶには、送電線が必要です。新電力は、発電設備や送電設備も持たなくてはいけないのでしょうか。結論から言えば、新電力は発電設備や送電設備をもつ必要はありません。
新電力の中には、石油精製会社などのように自前の火力発電設備を持っているところや太陽光、風力などの再生可能エネルギーの発電設備を持っているところがありますが、送電線をもっているところはありません。
一方、旧電力(最初に述べた10電力のことです。ここではあえて旧電力といいます)は、特に送電線については現在でも独占的に所有しています。これでは、いくら自由化といっても、不公平で競争原理など働くはずがありません。
そこで、電力の自由化を行うために、次のような方策がとられました。
1)発送電分離
2)電力の広域的、安定供給のための機関の創設
3)電力卸売市場の創設
4.発送電分離とは
文字通り、発電と送電を分けることです。発電と送電を、これまでのように地域ごとに1つの会社が独占するのではなく、それぞれ独立した別の会社が運営することをいいます。送電網は公共インフラであり、誰が発電したかで差別的扱いをするようでは困るので、送電網をもつ会社と発電所を持つ会社を分離して、市場競争原理で公正を期すということです。
小売り自由化から4年後の2020年4月1日から実施されています。送電網をもつ旧電力は、それぞれ以下のように送配電を担当する子会社を設立しました。
北海道 北海道電力ネットワーク(株)
東北 東北電力ネットワーク(株)
関東 東京電力パワーグリッド(株)
北陸 北陸電力送配電(株)
中部 中部電力パワーグリッド(株)
関西 関西電力送配電(株)
中国 中国電力ネットワーク(株)
四国 四国電力送配電(株)
九州 九州電力送配電(株)
このように、送配電については、電気の安定供給と、二重投資の回避という名目で、旧電力会社が地域独占状態になっていて、形だけの分離ということになります。なお、沖縄電力だけは、本土から独立した単独かつ小規模であるということで、兼業が認められていて発送電分離対象外となっています。 新電力は、上記の各会社の送電線を借りる形で、需要家に電気を送ることになります。これを電力の託送といい、借り賃すなわち託送料金を送電線の所有者である各送配電会社に支払います。
なお、小売りの自由化によって停電のリスクが高まるのではないかという心配の声をよく聞きますが、小売りの自由化と停電とは関係がありません。2018年地震による北海道全域での停電(ブラックアウト)は北海道の電力供給の大きな部分を占めていた大型火力発電所がストップしたために起こりました。2019年台風15号による千葉県での大停電は送電線が各地で切れたために起こりました。このように、停電は主として発電、送電部門で起こるのです。
5.電気の広域的安定供給とは
旧電力の地域独占がなくなったことで、全国範囲で電気の安定供給を図る必要があります。電気は、需要と供給のバランスを取ることが重要です。供給が需要に追い付かないと電気不足となり、といって作りすぎると、りんごのように倉庫に貯めておくことなどできないので、供給が需要を上回ることになります。いずれの場合も停電が発生する可能性があります。上述したように、2018年北海道で発生したブラックアウトは、火力発電所が被災して発電が止まったため、供給が需要を大幅に下回ったことによるものです。
このため、自由化にあたって需給バランスを監視するための機関と電気を売買するための卸売市場が組織されました。
前者は、2015年4月に設立された、電力広域的運営推進機関(通称:OCCTO URL:https://www.occto.or.jp/)です。日本全国の電力を安定供給するための司令塔です。ここでは、これまで旧電力が独自に運営していた送電網を広域的に運用し、全国10の供給エリア単位で管理されている電力の需給状況や送電網の運用状況を、全国規模で一元的に把握するとともに、各供給エリアの旧電力の送配電部門におかれた「中央給電指令所」がリアルタイムで安定供給を行っていることを常時監視する仕組みになっています。
OCCTOには、発電、送配電、小売など電力に関わるすべての事業者が加盟しなければなりません。これら各社が自らの電気の需給計画を提出し、これに基づいて、30分単位で需給が管理されることになっています。
6.電力卸売市場とは
正確には、日本卸電力取引所(略称:JEPX)といいます。簡単にいえば、電気の売買を行うところです。発電所を持たない新電力は、ここで、電気を調達するしかありません。電力卸売市場の価格は毎日30分毎に変わります。入札は、前日に行われ、価格は主に需要と供給によって変化しますが、そのほか季節や時間、あるいは原油や天然ガスの価格、原発や大規模火力発電所の稼働状況などでも変わってきます。
その価格は毎日公開されています(http://www.jepx.org/)
2020年暮れから2021年にかけて、通常は1kWh当たり10円程度だった価格が200円をオーバーしたことがありました。
卸売市場で買った電気代(仕入原価)に託送料金を加算したものが電気の仕入れ価格となります。これに燃料調整費や再エネ賦課金、利益を上乗せして顧客に販売します。電気料金の仕組みについては別途説明します。